2015映画ベスト10

1.マッドマックス 怒りのデス・ロード

2.さよなら歌舞伎町

3.プリデスティネーション

4.野火

5.ミッション・インポッシブル ローグ・ネイション

6.ナイトクローラー

7.ロスト・リバー

8.バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)

9.クリード チャンプを継ぐ男

10.ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲

 

だいたいこんな感じー。マッドマックスはもうしょうがないっすわ。

あとスパイ映画がやたら多かったなかで、トムクルさんの奴はずば抜けてよかった。キングスマン、アンクル、とマシューヴォーンとガイリッチーのライバル対決もよかったし(スペクターのことは忘れよう!)

バードマンは話自体どってことないんだけど、長回しフェチというか観てると変な部分で若干興奮してしまったのでそこで加点。ロストリバーはイケメンゴズリングさんの闇が垣間見えるのでおすすめ。10位のは、大量の犬が街を駆け巡る終盤のシーンだけでご飯を2杯ぐらいかきこみました。

What a Lovery Day !

予告編オブザイヤー2015

映画本編の出来とか関係なく、とりあえず上映が楽しみになる予告編を評価するこの予告編オブザイヤー。選考基準に厳格なルールはなし。日本語版だろうと英語版だろうと、1分半だろうと3分だろうと何でもありのフリースタイル。あと、本編を見た後に「予告編のあのわくわくはいったいどこに……」みたいな作品の予告編の編集の技術を逆算的に評価する、みたいな意味合いも多少あるんやで。

ちなみに去年2014年の予告編オブザイヤーはこちら。


インヒアレント・ヴァイス(字幕版) (予告編)

監督PTA、原作ピンチョン、ということで否応なくハードルが反り立つ壁ほどに高まったが、本編を観たところ個人的にはそれほどだった。いや、この予告編見る限り傑作の匂いしかしないじゃないですか。

 

ということで今年です。

まず大賞から。


The Revenant TRAILER (HD) Leonardo DiCaprio, Tom Hardy Movie 2015

西部劇好き、ということも多分にあるんだけど、これはすごすぎないですか。画面全体から匂い立つガチ感のサバイバルの香り。泥水、雪、血。木の上にいる敵の撃ち落とすシーンのすばらしさ。呼吸に合わせたBGM。来年公開の映画でダントツに観たい、と思わせてくれました。

そして次点。


映画『マッドマックス 怒りのデス・ロード』予告編

まあこれはしょうがないでしょう。ぶっちゃけこれは本編のどこを切り取っても高水準の予告編ができてしまうほどに全編破壊力のある映像だった。What a lovely day!の叫びは本当に心震える。サイッコー。

また次点。


Suicide Squad - Comic-Con First Look [HD]

え、ウィルスミスまでヒーロー映画に!?そんな映画界の昨今の力学に目をやりつつ、しかし目の前にこういう明らかに面白そうなものを差し出されると、首を垂れるしかねえなあ。ハーレクイーンのセクシーさもさることながら、戦に駆り出される悪人たちの悲哀に満ちた運命を予感させる悲しい音楽。そして忘れてはならないジャレットレト演じるジョーカーの不敵な笑み。故ヒースレジャーに引けを取らない雰囲気である。

この3つを今年の収穫として挙げたいと思います。

あとマッドマックスだけは本編も上映済、鑑賞済み、とあって予告編への見方が他のと若干違ってくるんだが、それもなんか致し方なし。次回から、来年からは分けたほうがいいかもしれませんね。

ということでディカプリオが今度こそオスカーを獲れるように祈っています。

 

 

The best tracks of 2015という名の何か

今年も終わりにちけえのでベストトラック。いろいろ聴いたけど厳選に厳選を重ねて15曲に絞りました(もちろん嘘さ!全然いろいろ聴いてないぞ!)。そして安心安定のミーハーチョイスをしています(みんな大好きYoutubeでほぼ全部公式で上がってるぞ!)。まあ備忘録的なあれやしそして1曲1曲に余計な一言もつけています。

 

1.The Mephistopheles Of Los Angeles/Marilyn Manson

あのマンソンがこんなブルージーなのやってくれるなんて、というギャップ萌え。

2.Ballad Of The Mighty I/Noel Gallagher's High Flying Bird

これはもう。単純にノエル推しなので。

3.Under The Rug/The View

この牧歌的でもありつつ儚げでもある的な音こいつらにしか出せんよなと思う。

4.Girlfriend/The Bohicas

デビューアルバムやのにやるやん。色気ある曲やん。

5.DESTINY/ねごと

良作のアルバム出した直後にこのキラーチューンやで。びっくりするやん。

6.Get Into It/The Strypes

若いのに気障であることに恥がない感じ。ええ度胸しとるでえ。

7.Weak Fantasy/Nightwish

お得意のゴシック感、アグレッシヴさ、大作感がてんこ盛り。

8.Dead Inside/Muse 

落ちサビのマシューの高音がキモティー。

9.The Dying Of The Light/Noel Gallagher's High Flying Bird

推しのノエルなので特別にもう1曲。悲しい。ひたすら悲しい曲。

10.メデューサ/水曜日のカンパネラ

珍しくくそまじめな曲。カッティングフェチにはたまらんし、凄まじく踊れる。

11.Open Up/The Dead Weather

力強い。メンバー全員で作ったとのことだが紛れもないジャックホワイト感。

12.Go/The Chemical Brothers

ラップのトラック作らせたら絶対外さないマン。

13.The Making of/The Bohicas

いいアルバムだったのでもう1曲。ボヒカズ、モンスターバンドになればよい。

14.Bad Blood ft.Kendric Lamar/Taylor Swift

原曲よりダンサブルなアレンジに。

15.Dirty Muddy Paws/The Subways

デビューからずっと同じ感じの曲やってるけど、一周回ってほほえましい。

16.Dance Dance Dance/E-girls

女性アイドルのディスコ的な曲って胸躍るよね

17.ヴィーナス/女王蜂

キャッチーやなあ。とにかく楽しい曲。

18.Don't Wanna Fight/Alabama Shakes

こういう黒さのあるロックもええやんね。

19.椎名林檎/神様、仏様

向井秀徳出てるし。

20.DOWNTOWN/MACLEMORE & RYAN LEWIS

多幸感。アップタウンファンクへの対抗意識ひしひし。

 

結局20曲にしました。

ちゃんとしたベストトラックは有識者の方々のやピッチフォーク、クロスビートロキノン等を参考にしていただきたい。来年は早々にブロックパーティ新譜ですが、どうなるか……あとリアーナとか。

2015上半期観たもの&聴いたもの

もう7月も半分過ぎたけど備忘録的なあれ。

□ベストトラック10か15ぐらい(順不同)

・ねごと / destiny

Muse / dead inside

・The Vaccines / Miracle

・Best Coast / Feeling Ok

・Noel Gallagher's High Flying Birds / Freaky Teeth

The Subways / I'm In Love And It's Burning In My Soul

・アンジュルム / 乙女の逆襲

Madonna / Living for Love

・Alabama Shakes / Don't wanna fight

Marilyn Manson / The Mephistoppheles Of Los Angels

モーニング娘。'15 / 夕暮れは雨上がり

The Prodigy /  The Day Is My Enemy

E-girls / Anniversary!!

The Cribs / Burning for No One

□観たアニメ

・冬クール:ジョジョエジプト編(春も継続)、デュラララ2期

・春クール:Fate/stay night  UBW攻殻ARISE、高宮なすのです!、てーきゅう4期、ニンジャスレイヤー。

 

映画に関しては年末にまとめて。

 

われらの狂気を生き延びる道――『マッドマックス 怒りのデスロード』

フロイトは『トーテムとタブー』で、息子たちがそれをうち倒して父の罪を償う、という構造が原始よりの人間が造る共同体の基本的なシステムだと言う。核によって荒廃し、水と油を奪いあう未来の世界が舞台のマッドマックス今作の構造も全く同じである。ただ違うのが、王から権力を奪うのが女たちであるということである。

母と子を徹底管理し奪う王から、自らの自由と生命の泉を取り戻す。「緑の地」もまた汚染し荒廃しフュリオサは乾いた砂漠にくずおれるが、彼女らは母と子を徹底管理し奪う王から、自分たちの自由と生命の泉を取り戻す。物語について言うことはそれだけである。

王イモータンをはじめとする狂気から自由であるには希望を持つしかない、とマックスは言う。ただ観終わったあと僕は気づく。彼らの狂気はなんと美しいことか。

歯にスプレーをぶっかけて迷わず死に飛び込む白塗りの男たち。太鼓隊に火を噴くギター。フュリオサの謀反からの戦闘(逃亡)シーンの数十分にはスクリーンの端から端まで一ミリの隙もなく狂気が敷き詰められていた。

観終わった僕の頭にあるのはあの戦いに自分も狂った男の一人として戦いに身を投じることである。太鼓をたたき、ギターを弾いて、槍を敵の車に投げたい。

残念ながら僕はマックスやフュリオサのように狂気から自由でいることはできない。これはあまりにアッパーな映画である。ガンキマりである。狂気に感染してしまった。

劇場でこの作品を観られたことに感謝する。

唯一信じられるもの――HOMELANDシーズン3

ボルヘ・ルイス・ボルヘスの「贈賄」という短編がある。北米の大学の博士と教授がキャリアを巡って心理戦を繰り広げる、この作家にしては珍しい題材なのだが、この作品についてあとがきでこう触れている。「北米人の偏執狂的倫理観には、いつも瞠目してきた」と。

いや、あんまり関係ないんだが、とにかくHOMELANDはシーズン3でも騙し合う騙し合う。前のシーズンであれだけのクライマックスを描いて、もうさすがに盛り上がらんやろ、と思ってたらそんなことはなかったぜ。

何より描かれるのはキャリーの上司、ソールの冷徹さ、である。テロ犯とされたブロディと繋がりのあるキャリーを問答無用に精神病棟送り。ぶちぎれたキャリーにイランのジャバディが接触したとみるや、ソールは奴を捕まえるために潜り込め、と命令。「よくやった」と抱擁。次第に、キャリーの病棟送りは初めからこのためだったと分かる。それによって、ただでさえ双極性障害の彼女がどれだけ苦しんだか。

それだけでなく、ソールは逃亡していたブロディを連れ戻し、アメリカを襲った英雄としてイラン革命防衛隊の司令官、アクバリと接触し暗殺せよと命じる。彼はバグダッドで8年間も捕虜となり、祖国を裏切ることを叩きこまれ、しかしそのなかでムスリムとして目覚め、アメリカの家族との関係に悩み、テロの決行をようやく踏み止まったにも関わらず、うまいこと別のテロ犯に仕立て上げられた、常人では考えられない境遇なのである。その彼を、またも。

勿論彼は挫折しそうになる。できない、と弱音を吐く。ただ彼は最後やり遂げる。正直何が彼をそうさせたのかは分からない。彼の表情はいつも揺れている。アメリカとイスラム圏の戦争を一人で背負い込まされたかのような彼の心情が誰に推し量れるのか。

ただ一つ、今回のシーズンで最も重大な出来事としてキャリーの妊娠がある。ブロディとの子である。そもそもこれまでの話でキャリーが、スパイの疑いがあったブロディに惚れてしまうということに並々ならぬ事情があったわけだが、妊娠という既成事実はブロディに何らかの感慨をもたらしただろうか。

ソールは革命防衛隊のジャバディを逮捕せず、スパイとしてイランに送り返し、ブロディという餌でアクバリを叩こうとする。それは次の長官に決定しているロックハートからすればあまりに無茶で、ブロディを処刑して面目を躍如したいという方針と相対する。だがソールは彼、ひいては自分たちのチーム以外のCIA自体をも一時的に騙す。この徹底ぶり、冷徹ぶり。徹底的に疑い、騙す、嘘が嘘を呼ぶ戦争において、キャリーはブロディへの愛を信条として動く。ぎりぎりの状態の彼女を繋ぎとめていたのはその一点だったと言っていい。だから彼を助けるための行動には全く躊躇がない。

ソールは最後ジャバディの影響力のため、暗殺を成し遂げたブロディを防衛隊に引き渡すかの選択を迫られる。アメリカを救った功労者をである。それはまた、何度目になるであろう、キャリーを裏切ることである。彼は作戦の合間に妻に浮気され、自分もまた騙されていたのだと悟る。結果的に浮気相手には制裁を加えることになるが、彼は妻を許し、自分の考えも改めた。そのことによってなのか、彼はキャリーを信じ、二人の脱出に賭けた。

だがロックハートの密告によってブロディは捕えられ、キャリーの目の前で公開処刑に遭う。痛ましいというほかない結末だった。何故ここまで彼は翻弄されなければならなかったのか。アメリカにもイランにも反逆者、国を売った者として刻まれる男。全ての嘘を引き受けた男。

キャリーもソールもその後仕事に戻るのだが、何故こうも彼らは強靭/狂人なのか。シーズン4はすでに放送されているようだが、彼女を突き動かすものは何になるのか、子供はどうなるのか、注目したい。

嘘は誰かを陥れるためでなく、――『ゴーン・ガール』

※ネタバレあるで。

 

そりゃ彼女が凄まじい嘘をつくのは彼女がろくでもない女だからというのがあるにしても、あのベンアフレックに突き飛ばされ頭を打つシーン、あれが決定打になったのだろう。あれから彼女は恐怖するようになり銃さえ持つようになった。復讐が目的の多くを占める一方で、彼女は夫から逃げる必要があった。それは先述の暴力、そして田舎でのつまらない、そのうえ経済的に困窮している生活から「身を守る」ために。

しかし逃亡先で彼女の目的は頓挫する。魅力的ですらあるほどに開けっぴろげで正直な男女によって。金が欲しければ直接奪いに行き、テレビ上での彼女の嘘を看破するような女、そしてしつこく手紙を送り続け彼女が頼ってくるや否や別荘に閉じ込め監視し束縛するストーカー男。そんな実直さに嫌気が差しながら点けたテレビに映っていたのは。

自分を騙した妻に対し心の底から不貞を詫びる(ふりをする!)ベンアフレックだった。彼はイカれた妻によって殺人犯(しかも死刑の可能性すらある)に仕立て上げられ気が気じゃないのだが、それを避けるにはとにかくテレビに出ろと敏腕弁護士は言う。情に訴えれば世論は動き、判決は変わる。裁判って、法って何かね、と思うが、ここらへんでこの世界は全て嘘に塗り固められてるんだと確認できるのだ。そしてあのテレビ番組のMCの女も嘘くさい嘘くさい。ということで、彼は自分を騙した女と同じ土俵に上がる。母の絵本と常に比較され衆目に曝されてきた彼女が殺された哀れな妻を演じたように。しかし複雑なのはここには自分の不貞を打ち明ける、という正直さがあることだ。ある部分で自分の内面を曝しながら、騙された恨みを忘れて、妻に戻ってきてほしい夫を演じる……。

妻は夫の姿に感銘を受ける。反省してくれたのね!ということだろうか。それも多少あるにしても、正確には違う。認めたのだ。自分を騙したにも関わらずテレビの生中継で演じる夫を。そして彼女はストーカー男に対して劇中で最もスキャンダラスな行為に打って出る。自分を本当に救うのは実直さではなくやはり嘘なのである。しかも一人で折り重ねていくのではなく、二人で編み込むように。本当にイカれている。

血まみれで彼女は帰り、夫と抱き合う。夫はおいふざけんな、と思うが彼女の腹には真実の赤子か宿っていた。これは二人が適当なセックスをしたときに出来た子かもしれず、二人に愛は通ってなかったにしても子は愛の結晶として生まれる。夫はここでなんと妻と子を育てていく決心を固めてしまう。「責任がある」と。しかし彼はここで妻と子を捨てることが何を意味するか勿論分かっているし、妻はそれを使って脅しもする。家を取り囲む嘘に目敏い奴らから身を守るには、二人で演じなければならないのである。二人は子供ができたことで嘘の規模を「家族」にまで拡大させる必要がある。だがそうしなければならない。

嘘は自衛の手段になる。夫は子を育てる、と生中継で宣言する。

 っていう感想。今年初め公開の『アメリカン・ハッスル』と比較してみるのも一興かもしれない。