ルビオ不要説とユタジャズの復調の話

今シーズン当初かなり調子が悪くプレーオフ圏外の勝率四割あたりをうろうろしていたユタ・ジャズだが、今年に入ってから本来の期待されていた強さを取り戻しプレーオフ圏内に鎮座している。嬉しい限りやで。ただもともとスロースタートと言われていたとはいえ、何がそんなよくなったんだろうなあとスタッツをいじくり始めると、合点がいくこととあんまり知らなくていいことが分かった。

なんとユタ・ジャズ、どうも僕の二推しプレイヤーのルビオ君不在中に6連勝してから調子があがったようなのだ。おいおいそれってYO。

このままではせっかくシステムとマッチしまくってるチームからトレード要員にされてしまうと焦った僕は、よっしゃわいがルビオ君守ったる代理人になったる、なと息巻いていろいろ調べました。

結論から言えば、6連勝に関しては対戦カードが良かったというのが一番の理由でした。見事に全チームプレーオフ圏外だし主力抜けてたり。ルビオの負傷交代と復帰の負けた相手はバックスとトレイルプレイザーズですからね。これをルビオ君のせいにするのはまあ可哀想ではある。実際連勝は途絶えてもルビオ君中心に調子はいいままだ。ルビオ君、よかったね。

ただデータを紐解いていくとなんか不穏なものが見えてきた。不調なチームに必要なものは何だったのか。ルビオ君の不在は何をもたらしたのか。

まずルビオ君といえばその類い希なパスセンス、視野の広さが特徴なのはみなさんご存じ。そんな選手が抜けるとパス回らないんじゃ、と思うじゃないですか普通。回ってるんだなこれが。

〇離脱前         TO 15.4     AST/TO  1.61     PACE  100.5

〇離脱中   TO 15.3      AST/TO 1.60     PACE  101.57

ペースもそのままでターンオーバーが増えたわけでもなくアシストも維持。とまあジャズの試合を見たことある人なら分かると思いますが、ジャズのオフェンスは人とボールをよく動かすかなりシステマチックなバスケです。動き方パス方向にけっこう決まりがあり勿論どの選手にもそれは浸透しています。だから一人抜けても別の人間が同じ動きができるわけです。残念ながらこの点、ルビオ君は替えのきかない選手ではないことになってしまいます。ただ先述の通り離脱中の相手は下位。同格以上ならば経験とパスセンスに優れたプラスアルファの部分が必要になるはずで、それが必要になる展開にならなかったという理由かもしれません。

しかしいくら下位と言ってもそんな上手くいくかね、ジャズってそんな強かったっけ?と思った方、その通りです。実はこのチーム、というかある選手、ルビオ離脱によってある変貌を遂げてます。それによってジャズは下位に連勝し、調子を上げたと僕は見ているのですが、その選手は……と勿体ぶるほどの答えでもないんですが、ドノバン・ミッチェルです(小声)。

去年の躍進の立役者、近年稀に見るルーキーオブザイヤーのデッドヒート、スラムダンクコンテスト王者、と一年ですっかりスターの仲間入りを果たしたミッチェル君だが、今シーズン序盤は不調にあえいだ。チームの調子とシンクロするように。とこれもわざわざ調べなくても分かることではあるがジャズは昨年からミッチェル君次第的なところがある。なのでルビオ君が怪我する1/7以前とそれ以降の6連勝中、ルーキーイヤーのミッチェル君の攻撃面での成績を比較してみる。

       PTS       FG%  3P%  USG%

〇17-18    20.5       43.7        34.0      28.1

〇~1/7    20.4       40.9        30.9         29.1

〇6連勝中   29.4       48.3        42.6         32.7

こうしてみると今季序盤のチーム不調時にはミッチェル君もシュートの不調に陥っていることが分かる。2年目のジンクス、プレッシャー、マークの激化、要因はいろいろあるだろう。得点平均は変わらないが成功率が低くなっている。そんななか襲った司令塔の離脱だがミッチェルは得点も確率も格段に上がりオンファイアしておりかなり気持ちいい。だが僕が最も着目したいのはUSG率である。不調時は昨年と変わらない率だがルビオ君離脱後には3%強上がっている。得点が増えるということは効率もそうだがアテンプトが増えるだろうしそれにはボールに触る機会が増えなければならないからその数字は自然なのだが、僕が言いたいのはボールに触る機会が増えた理由であり、それはルビオ君の離脱によってミッチェル君がPGに繰り上がったことで起こった、ある種の事故ともいえるのだ。つまりルビオ君が怪我したことでミッチェル君の調子があがりチームが復調した、という流れ。ちなみに佐々木クリスだったか、HCのザックスナイダーはシーズン当初からミッチェルにアテンプトを増やすよう指示していた、と言っていた。

6連勝のあとルビオ君は復帰しその試合は負けたが好調は続く。ミッチェル君のアテンプトを比較してみよう。

       FGA   3PA   FTA

〇1/7以前          18.5      2.1              3.9

〇~1/21   21.6            7.7              5.3

〇1/21以降  22.9            6.6              7.1

とまあこんな感じで一目瞭然なのだ。いかにミッチェル君がチームのコアかということですね(これもちなみに、このチームの最重要コアはゴベアです。スタッツを調べる必要がありません)。で初めの疑問に戻りますが、ルビオ君ってもしかしてジャズにマストな存在じゃないんじゃないのか。

まずネットレーティングで見るとオフコートよりもオンコートの方が高いのでこれを見る限りチームにプラスな存在であるとは言えると思います。ただ気になったのは離脱中のディフェンシブレートの断トツの低さで、なんと92.8。前述の通り相手チームがみな格下なのですが、それを差し引いても堅すぎるのでは? 思うに、ルビオ君の代わりに1番を務めたミッチェル君は相手の1番を守ることが必然的に多くなったのだが、1番がエースというチームが多い現代、ルビオ君よりアジリティの高いミッチェル君のほうが相手の1番は攻めにくいのではないか。加えて2番にはリザーブからオニール。これも平面のDFだけならルビオ君より恐らく上。つまりルビオ君の抜けたスタメンの個はDF面に関しては上回っていたのではということだ。悲しいことに。

勿論6連勝中はミッチェル君のオンファイアをはじめとして出来過ぎていた。ワンシーズンこの歯車がかみ合いっぱなしのまま進むわけがない。ただルビオ君の離脱は今成熟しつつあるジャズの別の未来を見せたと思う。ルビオ君のことは好きだがこれは否定できない。だがトレードデッドラインは過ぎ、ジャズは継続の道を選んだ。それもそれで間違ってない、と思う。ユタジャズは現時点でも最も美しくボールと人を動かすチームである。一見地味な彼らがスター軍団の牙城に食い込みできるだけ高みに登ることを祈る。