「キャプテン・フィリップス」観たぞえ

起きて二十分で家出てその三十分後に席座って観たんだけど、そういうタイミングで観るべき映画じゃなかった。

「ボーン」シリーズからだけどこの監督はことごとく緊張しかない映像を作る。今作はそれがかなり顕著で、船長は冒頭から常にピリピリ。ジョークの一つすら許されない雰囲気。

二度の海賊襲撃のシーンは本当に息をつく暇がない緊迫感で、梯子がかかったシーンでは思わずため息が漏れた。というかそのあと船を占拠されても息をつく場面は終わりが来るまでなかった。常に冷静に、気性の荒いソマリアの若者と交渉し、裏をかこうとする船長と臨機応変に逆転の機会を狙うクルーたち。向こうの船長を人質にとって形勢は互角と思われたが、フィリップスも救命艇に連れて行かれ、今度は密室空間。

そこからは米海軍とソマリアの若者たちの交渉劇になるんだが海軍の手際はさすがに見事で、じりじりと彼らは追い詰められていく。彼らの母船はすでに逃亡し、成す術はすでになかったのだと言える。貨物船を占拠出来なかった時点で勝負は決まっていた。

海賊たちもどこかでそれは分かっていたはずだ。たった三万ドルと船長の人質が土産ではどうしようもない。だがどうしても彼らは身代金に縋るしかなかった。金が必要だった。

勿論これは怖いソマリア海賊に襲われたけど助かってよかったね、という単純な話ではない。襲われた貨物船に載っていたのは彼らへの支援物資であり、それを彼らに伝えると「お恵みか」と言う。ソマリアの部族たちまでその物資が届いていたとは思えない。しかも「俺たちの海で魚獲りやがって」とも言う。金を奪うときも「俺たちの海の通行税だ」という。

彼らが漁師から海賊になった経緯には一番には金の問題があるだろうが、こうしたアメリカへの憎悪も少なからずあるだろう。そうした背景も見逃すわけにはいかない。だがその悲願である金の問題にしても、彼らは以前ギリシアの船を奪って大儲けとしたというのだが、それが手元に訪れたかというとそうではない。彼らは雇われている身であってボスがその金をかすめたということである。だがそれでも状況を少しでも変えるためには海賊をやるしかない。初めボスが参加者を募る場面でも、応募は殺到していた。

最後フィリップスが「もう限界だ」と泣き叫びその冷静さを失ったのも、そういった背景にあるなにかを想像して、果たしてこの事件に終わりはあるのかと思ったかもしれない。

そして最後海賊の若き「船長」は捕えられ、船員は狙撃され、フィリップス船長はその返り血を大量に浴び、手を縛られ目隠しをされた状態で保護される。

海軍の医務室で彼は「その血はあなたの?」と聞かれる。その彼の苦痛とソマリアの若者たちの苦痛が混じったかのような。

アイドル楽曲大賞2013

メジャーアイドル楽曲部門だけ投票したったので、一応メモとして。

1位.AKB48恋するフォーチュンクッキー

2位.BABYMETAL:おねだり大作戦

3位.私立恵比寿中学:禁断のカルマ

4位.BiS:BiSimulation

5位.Dream5:COME ON!

1位はもうこれ以外ない。2位はリンプビズキット的トラックにローティーンのボーカルという組み合わせの勝利。3位以下は順番もそんな深い理由はなく、何ならあと気になる曲がいくつかあって。

dancing dolls:Ring Dongとか、でんぱ組.inc:でんでんぱっしょんとか、9nine:Evolution No.9とか、PASSPO☆:Trulyとか、ももいろクローバーZ:宙飛ぶ! お座敷列車とかNMB48カモネギックスとか。

ももクロはもうそんなに冒険しなくていいんじゃないか、とアルバム聞いて思った。

あとBiSは変に目立とうとするのは別にいいんだけど……まあね……

「悪の法則」

観てきました。のでメモがてら大ざっぱに。

マッカーシー原作といえばコーエン兄弟監督の「ノーカントリー」で、あれも傑作でした。「も」って書いたけど、この「悪の法則」もなかなかのもんだった。

作中では麻薬カルテル最強で、とにかく命狙われたら逃げるしかない。舞台はメキシコとの国境だけどあの辺の麻薬ビジネスは実際にもとてつもない状態であるというのはよく聞く。

最後主人公のカウンセラー(固有名詞なし、常にその名で呼ばれる)のもとに届く妻の虐殺DVD、そしてわけもなく取引のトラックに積まれた腐った死体、などその狂気から奴らの恐ろしさは身にしみてわかる。

そういう「あ、こいつに狙われたら終わりだな」って奴に屈服する、っていう筋は「ノーカントリー」もそうで、あの不気味な出で立ちの屠殺用のガス銃持った奴が延々追いかけ来る話だった。マッカーシーはそういう圧倒的暴力への成す術のなさ、みたいな話好きなんですかね。ちゃんと読もうと思います。

でそういう世界の清涼剤的なものとして、キャメロン・ディアスおばさんが出てくる。超美人。彼女が標的を部下に殺させるとき、わざわざ砂漠にワイヤー仕掛けてバイカーが通るまで待ち、通るときライトアップして「あ!」と思った時にはすでに遅し、首スパン!という殺し方と、会社から出たブラピを、ランナー装って真正面から首に巻きついて自動で締まるワイヤーをかけて、頸動脈スパン!もう一人のランナーが鞄をひったくる、という非常にスマートで合理的な殺し方をする(屈指の場面)。

彼女は欲に従順で(性欲含む)、スポーツのようにブツを盗み、金を得るというスタンスだけども麻薬カルテルからしたら「悪いけどこれ戦争なのよね」ということである。

美しい肢体の(そしてなんかかわいい)チーターが、途中で消えてしまうのもその暗示なんだろう。カウンセラー=弁護士は自分の無罪を「弁護」できず、なすすべなく戦争に巻き込まれる。

クスリ、ダメ、ゼッタイ。

HOMELANDシーズン2観了

圧巻。と言う他ない。単純にあれほどクライマックスに向けて緊張感をじわじわと上げていき最後にまさに「爆発」させるその手際はもう見事という他ない。ドラマという媒体のエンターテインメントを熟知している、という感じだった。

そして役者もみな素晴らしい。キャリー役は特に感情を乱したときの目の演技がよかった。茶髪のカツラを被ったとき見た目が本当に地味になったのが驚いた。ブロディ役は英雄とテロリストを行き来する役だったが、風貌からすでにその宙吊り感というか捉え難さが充溢していてこの上ないはまり役だった。ソールのキャリーを包む優しげな表情、デイナの思春期らしい不満たらしい顔wなど挙げればキリがない。

第1シーズンでキャリーはブロディをテロリストだと疑いながら惹かれてもいた。その関係が観ててちょっと謎だったんだが、シーズン2になってアブ・ナジールとの三角関係だと捉えると結構しっくりくる(勿論取り合うのはブロディ)。その証拠にキャリーが捕まったときのナジールの、ブロディとの間には愛さえ芽生えていた(この発言は怪しいもんでただ駒としてしか見てないだろ、とも言えるが一応言質w)という発言。そしてブロディも英雄とテロリストの間で揺れる自分を知ってて受け止めてくれるのはキャリーしかいないからそっちにつく、と。んでナジールは排除されたので、心おきなく二人でいれるね、となったところで最後のあのテロ。

ブロディの家族は帰還してから非常にアメリカ的ファミリーとしてメディアに乗せられ、彼は副大統領候補にまでなったんだが、そこまでいくにはとことん嘘をつかねばならないようで、デイナとフィンが起こしたあの事件。結局ブロディが嘘に耐えられず家庭は壊れてしまうんだが、その家族の描写はどこも濃かった。あと奥さんの気持ちはよく分かるんだが子供の叱り方が結構マズいときがあってそこはやきもき。

無人機での爆撃を指示した副大統領とデイビットだったり、フィンのひき逃げをもみ消した副大統領の妻が結果的に最後逝ってしまうのは妙に因果応報的なあれがあったのが少し引っ掛かるけど本当に素晴らしいドラマだった。シーズン3、もしかしたらもっとこの先続いていくかもしれないが、その緊張感がいつまでも続くよう。

クインとガルベス君がお気に入りです。

 

ウォーキングデッドシーズン3前半観了

全4巻って少ねえなあと思ったらシーズン3の前半だけ販売&レンタルされてるらしい。後半は12月だと。生殺し。

ゾンビが世界中にはこびるってことは文明がぶっ壊れて、生き残った奴らはとりあえずみんなと徒党を組んで助けあわなきゃいけなくなるわけだが、ゾンビ映画はそこで共同体論みたいなのを試されることになる。それでこのウォーキングデッドはドラマという媒体もあって長いスパンで描けるので、だいぶその共同体の形成に時間をかけている。それで主人公のリックは保安官で集団のリーダーとしてアメリカを象徴するような振る舞いを云々かんぬんで、ここまできた。

そして今回別の集団が現われたんだが、住民が「ローマは一日してならず」とか言ったりコロッセオがあったりする。それがどこの国の象徴とかそういうつまんないことは抜きにして、とりあえず主人公たちはついに自分たちの共同体のゴタゴタではなく、相手の共同体との戦いに時間を割くことになった。これ戦争なのよね。

あと主人公の息子の成長が微笑ましい。小学生なのに銃の扱いも上手く、頼もしい。さすが保安官の息子(皮肉も込め)。んでおかんから子供が生まれるわけだが、それと並行してダリルがキャロルを背負って帰るところがちょっとシンクロしてて。ダリルはマザコンっぽく、キャロルおばさんの動向を気にしていた。

主人公の共同体が刑務所にあって、敵の共同体が綺麗な町を造っているっていう妙な対比もよかった。元にいた囚人追い出して殺すわ、あとから来たいい人たちを閉じ込めるわでどっちが主人公なのやら(仕方ないところもありつつ)。

最後にアンドレアはどうしようもねえ奴だな。